甲状腺とは
甲状腺とは首の前面(のどぼとけ付近)にある5cm程の臓器です。羽を広げた蝶のような形をしています。甲状腺ホルモンという物質を作ることが甲状腺の働きになります。甲状腺ホルモンは体の代謝を調節しており、胎児から思春期までの正常な発達や発育に、とても重要な役割を果たし、成人となっても代謝を調節する重要なものです。
そのため甲状腺ホルモンは、正常な身体の維持のために生涯にわたり必要不可欠で、その量は、多すぎても少なすぎても支障をきたします。
甲状腺の主な疾患
- 甲状腺ホルモン過剰(バセドウ病、破壊性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎など)
- 甲状腺ホルモン不足(橋本症など)
- 甲状腺腫瘍
甲状腺の主な症状
甲状腺ホルモン過剰 | ・暑がり、汗かき、手の震え ・息切れ、疲れやすい ・食欲があるのに体重が減る ・微熱がつづく ・月経不順 |
甲状腺ホルモン不足 | ・寒がり ・皮膚乾燥 ・体重増加 ・便秘 ・気力低下、だるい |
甲状腺腫瘍 | ・頚部の圧迫感、違和感(大きなしこり) ・声がかすれる ・息が吸いにくい ・レントゲンで気管が曲がっていると言われた |
甲状腺ホルモン過剰
甲状腺ホルモンが必要以上に体の中に存在している状態であり、体の代謝が活発になりすぎてしまい、様々な症状を引き起こします。主な症状は、動悸、手の震え、体重減少、発汗増加、疲れやすさ、不眠、イライラなどです。代表的な原因には、バセドウ病や破壊性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、過剰なヨウ素摂取などがあります。
バセドウ病
バセドウ病は、自己免疫の異常により甲状腺が過剰にホルモンを産生する病気です。甲状腺が腫れて大きくなることが多く、女性に多く、20〜40歳代での発症が一般的です。治療には抗甲状腺薬、放射性ヨウ素療法、手術があり、甲状腺ホルモンの正常化を目指します。
最初の治療としては抗甲状腺薬やヨウ化カリウムの内服での加療を行います。内服に伴い、まれに無顆粒球症(白血球数の著しい低下)、肝障害などの副作用が出ることもあり、定期的に血液検査を行う必要があります。内服治療で副作用が出現する、もしくは内服での治療効果が乏しい方に関しては、手術・放射性ヨウ素療法が可能な適切な医療機関にご紹介します。
破壊性甲状腺炎
甲状腺の細胞が壊れてホルモンが一時的に大量に血中に放出されることで起こる甲状腺炎の一種です。多くは自然に改善しますが、症状が強い場合は症状を抑える薬剤での治療が行われます。
基本的には経過観察が中心で、多くは数週間から数ヶ月で自然に治りますが、甲状腺機能低下症に移行する場合があり、その場合は甲状腺ホルモンの内服補充が必要となります。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染などが原因で甲状腺に炎症が起こり、一時的に甲状腺ホルモンが過剰に血中に放出される病気です。特徴的には、首の前側の痛みや腫れ、発熱を伴います。
症状は数週間から数ヶ月で自然に改善することが多いですが、炎症や痛みが強い場合は、非ステロイド性抗炎症薬や場合によってはステロイド薬が使われます。甲状腺機能は多くは経過とともに正常に回復します。
甲状腺ホルモン不足
甲状腺ホルモンの分泌が慢性的に不足する状態で、最も一般的な原因は自己免疫性甲状腺炎(橋本病)です。そのほか、甲状腺の手術や放射線治療、ヨウ素不足、薬剤の影響なども原因となることがあります。治療は、欠乏した甲状腺ホルモンの補充が基本で、服薬によりホルモン値を正常範囲に維持します。治療開始後も定期的に血液検査を行い、適切な薬の量を調整して管理していきます。
橋本病
自己免疫の異常で甲状腺が慢性的に炎症を起こし、徐々に機能が低下する病気です。女性に多く、遺伝的な要因も関係しており、家族内に同じ病気や他の自己免疫疾患を持つ人がいることが多いです。免疫細胞が自分の甲状腺を攻撃し、甲状腺が腫大または萎縮し、ホルモン分泌が減少します。治療は不足した甲状腺ホルモンの補充が基本で、長期間の服薬管理が必要です。定期的な検査でホルモン値を調整し、超音波検査で定期的に甲状腺の状態をチェックします。
甲状腺腫瘍(しこり)
甲状腺に発生する腫瘍です。概ね9割は良性なのですが、1割程度は悪性であると言われています。当院では精査、化学療法や手術治療が必要と考える甲状腺腫瘍に関しては、対応が可能な専門施設へご紹介しております。経過観察が可能な甲状腺腫瘍は、定期的な超音波検査でのフォローアップ対応を行っています。